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引渡し前に火災・地震が起きたら?買主の代金支払い義務と危険負担

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松井純子行政書士事務所(開業準備中)
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結論からいうと、引渡し前であれば買主は代金の支払いを拒絶できるのが原則です。
「不動産売買契約書にサインしたけど、引渡し前に災害が起きて引渡しができなくなった場合、代金の支払はどうなるの?」
大きな買い物になるほど、買主はもしものことが気になると思います。
「危険負担」という言葉を聞いたことはありますか?
契約書に危険負担条項として登場している場合があります。
契約書の内容によっては、数千万円の支払い義務が残る可能性があります。
危険負担条項とはどういうことを定義しているのか、どんなトラブルを回避するためにあるのか。いまいちピンとこないことがあるのではないでしょうか。

この記事では、

  • 契約書のどこを見ればいいか
  • いざとなれば誰に相談すればいいか

などがわかるように解説しています。


目次

1.買主は引渡し前なら代金の支払を拒絶できる

引渡し前であれば、買主は代金の支払いを拒絶できるのが原則です。
この原則を支える民法上のルールを確認します。

  1. 引渡し前の滅失・損傷リスクは原則として売主が負う
  2. 引渡し前なら買主は代金支払いの拒絶が可能
  3. 契約書に特約がある場合はその内容が優先されることがある

ただし契約書の内容次第でルールが変わります。
民法のルール通りだと契約書を確認しないでいると、思わぬ条項が契約書に記載されている場合もあります。
契約書の確認と、専門家への相談が重要となるでしょう。


2. そもそも「危険負担」とは?契約書に出てくる理由

危険負担とは、双務契約(売買契約のように、お互いが義務を負い合う契約)において、一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合に、もう一方の当事者が反対給付(代金の支払い)の義務を負うかどうかを定めるルールのことです。民法536条に規定されています。
ここでいう「危険」とは「危ない」という意味ではなく、発生するかもしれないよくない出来事、つまり「リスク」という意味です。
「責めに帰することのできない事由」というのは「〜の責任ではない事由」「〜のせいではない事由」と読み替えていいでしょう。

売買契約において、「危険」とは代金を支払う義務が消えるかどうかのリスクと考えられます。
つまり、売買契約における危険負担とは、売買契約成立後・引渡し前に、天災など双方に責任のない理由で目的物が滅失・損傷した場合、そのリスクをどちらが負うかを決めるルールのことです。
民法にデフォルトのルールはありますが、特約で変更できるため、契約書に明記されることが一般的です。


3.買主の権利:代金の支払いを拒絶できる3つのケース

引渡し前に目的物が滅失・損傷した場合、買主は代金の支払いを拒否できます。ただし、その滅失・損傷が誰の責任によるものかで代金支払いの拒絶ができるかどうかが決まります。

  • 売主に責任がある場合:契約不適合責任の問題(履行追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除が選択肢)
  • 買主に責任がある場合:代金の全額支払義務を負い、契約解除もできない
  • 双方当事者に責任がない場合:代金支払いを拒絶できる(危険負担の本来の適用場面)

買主が代金の支払を拒絶できる3つのケースを確認していきましょう。

ケース①:地震・台風などの自然災害で建物が全壊した場合
結論:代金の支払い拒絶+契約解除が選択肢になる
買主は代金支払いを拒絶でき、契約解除も選択肢となります。

ケース②:双方に責任のない事由で建物が一部損傷した場合(全壊ではない)
結論:契約不適合責任との関係で処理される可能性がある
双方に責任のない事由による一部損傷の場合、買主は損傷の割合に応じた代金の減額を請求できると考えられます。
民法563条の類推適用等が議論されますが、個別の契約内容によって異なります。契約内容により結論が変わる可能性があります。
このケースは判断が分かれやすく、トラブルになりやすいポイントです。

ケース③:買主側に帰責事由がある場合
結論:この場合は買主が危険を負担する
引渡し遅延が買主の都合による場合は危険が買主に移転します。つまり、買主の責任であるので、代金を支払わなければなりません。

どのケースに該当するか判断が難しい場合は、契約書を持参して行政書士に相談することで、自分の立場を整理しやすくなります。


4.危険の移転時期:「引渡し」がすべての分岐点

危険の移転時期は「引渡し」が原則の基準です。
引渡しとは、例えば鍵の受け渡しであるとか、実際の占有の移転などです。必ずしも登記が基準になるわけではありません。あくまでも引渡しです。

引渡し前の話に注目していますが、引渡し後はどうなるでしょうか。
いったん引渡しが完了すれば引渡し後は、危険は買主が負担することになっています。引渡してしまえば代金支払い義務が生じます。

タイミング危険の負担者買主は代金を払う?
契約成立後〜引渡し前売主拒絶できる(原則)
引渡し後買主支払い義務あり
買主の帰責で引渡し遅延買主支払い義務あり

5.契約書で必ず確認すべき「危険負担条項」の読み方

① 危険負担条項はどこに書いてある?
不動産売買契約書では「第○条(危険負担)」として独立した条項が設けられていることが多いです。
見当たらない場合は「目的物の滅失」「引渡し前の損傷」などのワードで探してみてください。

② 条項の読み方

【危険負担条項例】
本件目的物の引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない事由により目的物が滅失した場合、買主は代金の支払義務を負わない。

上記条項例では、以下のような意味になります。

目的物の引渡し前に、売主買主双方の責任でない事由により目的物が滅失した場合、買主は代金を支払わなくていい。

これは例であり、例えば「民法の規定に従う」と書いてある場合は、原則どおりのルールが適用されます。

③ 特約で変更されているケースに注意
もし、「危険負担は買主が負う」という特約が入っていれば注意が必要です。
これは売主に有利な条項になっています。

④ 引渡し日と代金支払い日の記載を照合する
代金を先払い・引渡しが後という順序になっていないか確認しましょう。

⑤ 天変地異・不可抗力条項との関係
危険負担条項と不可抗力条項が矛盾していないか確認しましょう。
複数の条項にまたがって確認が必要な場合、行政書士に契約書全体のレビューを依頼すると、見落としを防ぎやすくなります。


6.契約書にサインする前のチェックリスト

□ 「危険負担」条項の場所を確認した
□ 買主に不利な特約が入っていないか確認した
□ 引渡し日と代金支払い日の順序を確認した
□ 天変地異・不可抗力条項との整合性を確認した
□ 火災保険・地震保険の付保タイミングを確認した
□ 不明な条項は署名前に行政書士などの専門家に確認した

チェックが全部できなかった、または判断に迷う項目がある場合は、署名・捺印の前に行政書士へ相談することをおすすめします。


7.行政書士に相談・依頼できること

契約書に関して、行政書士に相談・依頼できることをまとめます。
「契約書と行政書士って何の関係があるんだろう?」と不思議に思うこともあるかもしれません。
しかし、行政書士は街の法律家。契約書の条項解釈は専門知識が必要なため専門家である行政書士が契約書に関する相談・依頼ができるのです。

行政書士にできること(危険負担・不動産売買関連)

  • 売買契約書の内容確認・条項の読み解きサポート
  • 買主・売主それぞれの立場からのリスク説明
  • 危険負担条項や特約の意味・影響の解説
  • 契約書の作成・修正・特約条項の整備

行政書士に相談するのに向いているタイミング

  • 契約書を渡されたが、意味がわからない条項がある
  • 特約の内容が自分に不利かどうか判断できない
  • 引渡し前にトラブルが起きそうで、どう対応すればいいかわからない
  • これから売買契約書を作成・整備したい

行政書士は法律に基づく書類作成・相談の専門家ですが、訴訟代理や法的紛争の代理は行えません。弁護士の業務領域となっております。
トラブルを未然に防ぐために行政書士をご利用ください。すでに訴訟・紛争に発展している場合は弁護士への相談が適切です。


8.売主側が知っておきたい契約書の注意点

売主は、引渡しまで善管注意義務をもって目的物を保全する必要があります。
引渡し前の火災保険は売主側で維持しておくことが一般的です。
売主として契約書の危険負担条項を適切に整備したい場合も、行政書士に条項作成を依頼することができます。


おわりに:契約書の危険負担条項を確認することが、買主の最大の自己防衛

  1. 危険負担とは、引渡し前の滅失・損傷リスクをどちらが負うかのルール
  2. 原則として買主は引渡し前の滅失なら代金支払いを拒絶できる
  3. ただし契約書の特約でルールが変わることがあるため、条項の確認が必須
  4. 危険が買主に移転するのは「引渡し時」が原則
  5. 不明な条項・不安な特約は署名前に行政書士へ相談するのが最善策

まず手元の売買契約書を確認することから始めましょう。危険負担条項と引渡し日の記載を確認しましょう。
難しい、わからないと不安に感じたら、署名・捺印の前に行政書士に相談してください。
あなたの財産を守るのはあなたの行動です。


オンラインで全国対応しています

契約書の内容に少しでも不安がある場合は、専門家によるチェックを検討するのが安全です。
ぜひ当事務所にご相談ください。

当事務所では以下のようなご要望を承っております。

  • 契約書の危険負担条項・特約の意味を確認したい
  • 買主・売主として自分の立場でのリスクを整理したい
  • 売買契約書の作成・修正を依頼したい

オンラインで全国対応しています。
お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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